Shared Value Leadership Summit 2016参加報告

参加者:CSV開発機構副理事長 水上武彦
編:早稲田大学 市橋咲

2016年5月10日・11日にShared Value Leadership Summit 2016がニューヨークにて開催されました。これは、CSVを提唱しているマイケル・ポーター氏、マーク・クラマー氏が設立したFSGの主催で2011年から始まった会合であり、今回が第6回目になります。Shared Value(CSV:共有価値の創造)を推進する世界中のリーダーが集まり、知識を共有する場となっています。
2016年度の初日のテーマは”Changing the World: The Power of Business”、2日目のテーマは”Changing the world: The Power of Collective Action”でした。 大きなテーマを取扱う全体セッション/パネル、世界で活躍する個人に焦点をあてたストーリーテラー、具体的なテーマを議論するブレイクアウトセッションなどが実施されました。

詳細なスケジュールはこちら
http://sharedvalue.org/agenda-shared-value-leadership-summit-2016

<1日目の概要>

例年どおりマイケル・ポーター氏の講演から始まりましたが、今年は世界銀行グループ総裁のジム・ヨン・キム氏との対談があったため、例年と比べると講演は短めでした。ポーター教授のプレゼンは、「社会が変化する中、ビジネスの役割が変わっている。 社会貢献ではなく、本業でサステナブルかつスケーラブルに社会問題に取り組むことが必要。社会問題に関心を持ち、社会問題とビジネスの関わりを理解してビジネスの問題と捉え、そこにビジネス機会を見出すシェアード・バリュー思考が重要。」といった基本的には従来からのトーンでしたが、「シェアード・バリュー思考」は、重要なキーワードです。
ポーター教授からは、昨年発表されたフォーチュン誌の”Change the World List(世界を変える企業リスト)”といくつかの企業も紹介されましたが、それが次のセッションにつながります。 “Change the World List”とは、昨年、アメリカのビジネス誌フォーチュンが、CSV先進企業を評価し発表したものです。これらの中からAyala、MasterCard, CVS Health, Novo NordiskのCEOやEVPが登壇し、パネルディスカッションが行われました。その中でも、CVS Healthの話が印象的でした。

「ビジネス環境のCSV」は、特定の地域で必要なビジネス環境を整備するという観点から「クラスターのCSV」とも呼ばれます。社会と企業の関係に注目し、社会が企業活動を強化・サポートするよう働きかけます。

 

"Change the World List"

http://fortune.com/change-the-world/

 

CVS Healthは米国最大のドラッグストアを経営しており、社名変更前はCVS Caremarkと言い、CVSとCaremarkが合併して出来た会社です。合併会社が求心力を高めるため「健康」価値の創出を企業の目的と再定義しました。必然的に「健康」企業として、タバコを販売しているのは如何なものかという議論が巻き起こり、最終的には、タバコの販売を中止するなら最初にそれを実施する企業となるべきだという結論に至り、20億ドルの売上があったタバコの販売を中止しました。 当然社内には大きな反対もあったようですが、長期的な観点からこの決断を下した結果、株価は66%上がり、店舗で時間を過ごす人も25%増え、優秀な人材が就職を希望してくるようになりました。長期的なCSV思考を持つ人間からすれば当然の結果とも考えられますが、実際にこうした決断を下すのは難しいものです。それを株式市場が評価しているというのは、多くの企業の参考になるでしょう。
初日はその後、テーマごとのワークショップで、CSVを具体的に進めるには、まずは、社内でのCSVへの理解を進めつつパイロットプログラムなどを実施することが重要などの議論をした後、全体セッションで、トヨタのChief Social Innovation Officerの話、インターフェースやセブンス・ジェネレーションのCEOらによるパネルなどが行われました。

<2日目の概要>

2日目は、”The Power of Collective Action”、企業、政府、市民セクター、財団などが互いに強みを活かしつつ、社会的課題に取り組む力がテーマです。こうした取り組みをコレクティブ・インパクトということもありますが、マルチステークホルダーが社会的課題という共有目的を持つCSVならではの特徴的なビジネスモデルです。コレクティブ・インパクトの要諦は、以下の通りです。

出所:FSG

 2日目のセッションの具体的な内容としては、コンシャス・キャピタリズム、セリーズといった、企業による社会課題への対応について、CSVとは異なるアプローチを推進しているプレーヤーによるパネル、マッキンゼー・ソーシャル・イニチアチブによる話、GE財団やウォルマート財団が参加するパネルなどが行われました。ゴールドマンサックスや機関投資家によるパネルもありましたが、最近は、企業のことをしっかり理解している投資家は、企業のCSVなどの取り組みを評価するのは、当たり前になっているようです。
また、SDGsを推進する企業によるパネルも行われ、コカ・コーラ、ノボザイムズなどの企業が登壇しました。コカ・コーラは、SDGsの17のゴールそれぞれについての取り組みを整理しています。 その中でも、SDG5「ジェンダー」とSDG6「水」がコカ・コーラにとっての重要課題とのことです。ノボザイムズは、2020年までの戦略目標策定にあたってSDGsからインスピレーションを得ているほか、イノベーション・パイプラインの評価においてSDGsへのインパクトを考慮する評価ツールを導入しています。

出所:Coca-Cola HP

本Summitは、CSVの最先端の状況を理解できる内容もさることながら、マイケル・ポーター氏、マーク・クラマー氏をはじめとする世界のCSVリーダーたちと気軽にネットワーキングできるところが魅力です。私も大いに刺激を受けていますが、今後は、日本企業の方々にも積極的に参加して頂きたいイベントです。

一般社団法人CSV開発機構:
Japan CSV Business Development Organization